披露宴イメージ

花嫁の手紙のない披露宴

結婚が決まり、挙式と披露宴をするホテルでブライダル部の方と打ち合わせをしているときのことです。
披露宴で両親に贈る花嫁の手紙を当日までに書いておくようにブライダル担当者に言われました。
家に戻り、一生懸命手紙を書こうとしましたが、なかなか文章が浮かんできません。
元々超が付く理系で文才もない上に書きたいことが溢れすぎて、うまくまとめられないのです。
自分の気持ちをどういう風に書きたいのかわからなくなり、途方に暮れながら数日が経っていきました。
そのうち、いっそのこと自分の披露宴では花嫁の手紙をなしにしてしまおうという気持ちさえ浮かんできました。
私は両親や披露宴に出席してくださる方々を感動させる手紙は書けないとかなり落ち込んでいたとき、一つだけ自分にできることがあることに気が付きました。
それはピアノです。
音大を目指し、足掛け10年間レッスン漬けの毎日を送りましたが、他に目標ができ別の道に進みました。
不器用な私にはこれしかない。
花嫁の手紙の代わりに心を込めてピアノを弾こうと決心しました。
母にそのことを伝えると、弾いてほしい曲をリクエストしてくれました。
母も期待していたであろう花嫁の手紙を書かないという娘に失望するどころか、むしろ喜んでくれたので救われたような気がしました。
大急ぎで楽譜を買いに行き、その日からまたピアノのレッスン漬けの日が始まったのです。
結婚式まで日がなかったのでピアノが手配できるかどうか冷や冷やするところもありましたが、ブライダル部の方のおかげで披露宴会場にピアノを手配することができました。
そして、当日を迎えました。
人前で弾きなれているはずなのに手が震えて止まりません。
涙でかすんで楽譜がよく見えません。
でも、今まで育ててくれた両親への感謝の気持ち、これから新しく家族になる義両親への気持ち、手紙には書くことができなかったことをすべてメロディーにのせて伝えようと思いました。
手紙を書けなくてごめんなさい。
ピアノで伝えます。
これが私です。
両親も義両親も涙を流して喜んでくれました。
私の手紙に書けなかった思いは伝えられたと思いました。
それから10数年が経ちました。
今は、私の娘が毎日ピアノを弾いています。
母と私で娘のピアノを聞きながら葛藤していることがあります。
娘が結婚する時には、私ができなかった花嫁の手紙を読んでほしいということと私のようにピアノで思いを綴ってほしいということです。

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